移動途中の新幹線。

 パソコン画面の凝視に疲れ、大神秋人はチラリと隣の席を見て、ふと手を休めて考えた。

 さっきから、ことのほかシアワセそうに弁当を食っている部下、赤野燈子。


 …全くよぉ、使えねえ女が来たもんだ。

 課長のやつ、俺が気に入らないもんだからって、『宜しく頼むよ』なんつって、ワザワザ直下につけやがって。

 何せコイツ鈍すぎて、あれだけ俺が怒鳴り散らしても、全くコタえてやがらねえ。

 大体、この課のヤツらは皆、あの子を甘やかすもんだから、危機感ってもんがない。

 仕事は山積みだってのに。

 特に熊野、“好みのタイプだ”とかって赤野をやたらと庇いやがる。

 あれじゃあますます図に乗って、仕事が覚えられなくなっちまう。
 アイツのためにもならないだろう?

 …まあな、見た目はそう悪くないけどな。特にこないだのナマ足ソックスはツボ…って、何を言わせる。 

 おい、赤野。
 オマエは一体、何がそんなにシアワセなんだ?
 その椎茸の佃煮は…それほどに旨いのか。


《おまけ・おわり》