「次に婦人は、お前に何か面倒な作業をを言いつけるだろう。
 そうしたらお前は出来る限りそれを早く終え、ドアの前で待機する。
 ……そしてタイミングを見計らい、こう言う。
『大神さん、急いで下さい。そろそろ時間です』」

「『時間です』!」
「分かったな」

「はいっ。
でも……ちょっと待って下さいよ。
意味がさっぱり解りませんが…
それで全部?」

彼は、私の疑問を意に介さず、再び箸を動かし始めた。
 
「うん、くれぐれも間違えないように。
いいか、要は…タイミングだ。
タイミング」
「タイミング…ですか」

「ああ…」

彼はいつになく憂えた表情で、車窓を見つめた。
 
もう少し詳細を聞きたかった私だったが、その顔が余りに切なくて、何も言えなくなって、隣り合わせに2人して、弁当の残りを黙々と平らげた…