灰色の中でただ一人完璧にスーツを着こなす彼は、大神秋人。

総合職で、他部との窓口及び外渉にあたるこいつのみ、ここではホワイトカラーである。

弱冠28歳、最年少のリーダー格で、出世コースのエリート社員だ。

入ったばかりの頃の私は、
『ああ、入って良かった』
と、不覚にも喜んでしまった。

何せ、顔良し、スタイル良し、将来性大いにありの有望株である。

社内男子ランキングでは常に上位。噂では秘書課のマドンナ、松島さんと交際中とのこと。

しかも、声がいい。
良く通る響きわたるようなテノールは、私の胸に響いてならず、彼の本性を知った今でも、怒鳴り声でさえうっとりしてしまう程である……