そのまま碧空くんは近くの水道へと行ってしまったので、結局私は何もできずに、ポケットに手を突っ込んだままその場に立ち尽くしていた。


あぁ……行っちゃった。


少しだけ悔やまれるような、でもどこかホッとしたような気持ちで。


別に私が心配したり、気にする必要なんてないはずなのにね。


他人事だと思えないのはどうしてなんだろう。


碧空くんのことはもう、自分には関係ない。


逃げてしまったのは私のほうだ。


それなのに今さら声をかけようなんて、そんなこと思っちゃいけないよ……。


誰もいなくなった階段の前で、ポケットからそっと絆創膏を取り出す。


私は気づかれないようにそれを、こっそり彼のタオルの上に乗せておいた。


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