ケータイ小説 野いちご

最近わたしは毎晩、この衣を裏返しにして眠りについている。


ずうっと昔、幼馴染みの人魚に教えてもらった話。


『夜の衣を裏返して寝るとね、好きな人の夢が見られるんだって!』


―――たわいもない迷信。

わたしはそんなの、これぽっちも信じていなかった。


なのに、待っても待っても彼に会えないことで悲しんでいたある晩、ふいに思い出したのだ。

それ以来、わたしはずっとこの迷信を実行するようになった。


衣を裏返してかぶると、粗い編み目から飛び出したささくれのせいでちくちくしてたまらないんだけど。

でもわたしは、頑張って毎日裏返しにしている。


あぁ、いつになったら、この迷信の効果が出るのかしら?


夢でもいいから、会いたいの。

会って、もう一度、ちゃんとお礼が言いたいの。

そして、それから―――。


そんなことを考えながらうとうとしていたら、ふいに、小魚たちが騒ぐ声が聞こえてきた。

いったい、なにごと?


わたしは貝殻のふたを開け、隙間から顔を覗かせた。

外の様子を窺っていると、魚たちが大急ぎで散っていくのが見えた。


彼らが逃げてきた方向に目を向けると。


―――地曳き網だわ!


わたしは大慌てで貝殻の中から飛び出し、全身を使って矢のような速さで海水を切り裂くように、逃げ惑う魚たちと逆方向に泳いでいった。



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