寒いからって芙祐は最近電車通学。
だから駅まで送る。



マフラーに顔をうずめて、
俺の手を取ったと思えば


「さむい」



ってまだ震えてるから
俺のブレザーのポケットに芙祐の手ごとつっこんだら



「あー、あったかい」


ってやっと笑顔。



「……かわ」


「ん?」


「別に」


「可愛いって聞こえたよ」


そう言って、にまっと笑う芙祐。


「言ってない」



こいつ、耳よすぎ。



「ヤヨちゃん、駅裏デートしよ?」



「駅裏?なんかあったっけ?」



駐輪場くらいしかなかったような気がするんだけど。


あとは狭い道があったかな?


歩いて迂回。線路下のトンネルを超えて、駅裏についた。



「とーちゃく」



って、



「やっぱ何にもねえじゃん」



ひとけのない、地味な路地。



「ヤヨちゃん何か飲みますか?」



芙祐は俺の手を離し、自販機の前で止まって、じぃーっと眺めてる。


その後ろ姿、楽しそう。



「何飲むの?」



そう言って、俺が小銭を入れると



「あ、いいのに」


「いいから。押せよ」


ガタン……ホットココアが落下。
優柔不断にしては早く選んだな。



「じゃあヤヨのはあたしが奢ってあげよう」



「いらない。いつかバイトしたらにして」



俺、芙祐と違って今も週一でバイトしてるから。



「ありがとー、ヤヨ」



語尾に、ハートが、見える。



「ん」



同じくココアの蓋をあけて、
2人で立ち話してたら、



「ヤヨちゃんヤヨちゃん、」



って、その企んだ目は……なんだ。