「あ、うんっ。全然っ!全然平気だよ!」



溢れ落ちそうな涙を慌てて拭った。



「そう?泣きそうな顔してるように見えたから」

「あはは!そんなはずないってばぁ!」

「なら良かったよ。じゃあ、先に校庭行くね」



次咲くんはロッカーから、大量のゴミに埋もれた靴を平然と取り出している。

もう見慣れたとでも言うように。

気に止めることもせず、足を通すと小走りで駆けて行った。



何事もなかったように振る舞える次咲くんは凄いよ。

辛いはずなのに……悲しいはずなのに、それを表情に出さないのだから。



私にはそんな強さはない。

次咲くんのようにはなれないよ。



「うっ……」



泣いたら駄目だ。

泣くな、泣くな、泣くな私!

負けたら駄目だ!



そう思うのに……自分の意思ではもう止められなくなっていた。