あぁ……助かった。

地に足がついているだけで、こうも安心感があるとは。

普段の何気ない日々では味わうことのない、経験しないと分からない出来事だね……。



とは言え……

「ひょっ……ひょぉぉ……」

超高層ビルの淵で下ろすことは無いでしょおぉ!



あまりの高さに目眩がしそうだ。

足がすくんで動けなくなって、膝から崩れるように座り込んだ。



「あっはっはっは!ビビり過ぎて腰が抜けたか?そりゃあそうだろうなぁ。一歩でも前に出れば、真っ逆さまだからな」



アーラは怖がる私を見て楽しんでいるみたいだ。

流石……と言うべきか。

その悪魔らしい所業を、妙に冷静に納得してしまった。



もしかして……ここから私を突き落とすつもり?

落ちたら拾ってやる、とか言っていたけどアーラは悪魔だ。

信ぴょう性が無さ過ぎる。



「なんだよその顔。楽しくなかったか?」

「たの……しくなかった」



ここは嘘でも楽しいって言うべきだと思ったけど、咄嗟に本音が出てしまった。



アーラは不満気な表情で、

「この俺が……人間如き下等生物の相手をしてやったのに」

愚痴を漏らしながら、私の手を強く引いた。