No side*



ざわざわと騒がしい朝の廊下。そこを周りの視線を一身に集めながら、けれど何も気にすることなく歩いている少女がいた。



その少女はそれはそれは美しい。



そんな少女の名前は相澤美優_____今現在は西條美優と言う。




そしてこの廊下にもう一人。美優程とはいかないモノの、女子生徒の視線を集めている人物が美優の向こう側から歩いて来ていた。




美優に対して周りは学校イチの美女を朝から見れて興奮していても決して騒ぐことはないが、それとは対照的に向かってくる人物はキャーキャーと周りを黄色い歓声で沸かせていた。




黒い髪をさらりと揺らし、身長は少し低いにも関わらず一目見て長いと思う脚で綺麗に歩き、アーモンド型の大きな視線をギャラリーに向けるこの“男”は確信犯だ。だって蕩けそうなほど甘い笑みを浮かべているのだから。






「……あら今日も騒がしいのね」




「おはよう美優。美優も絶好調だね」




「アイはいい加減控えたらどう?」



「これはもう日課なものでね。その提案は受け入れられないなぁ」




「そう、残念。なら代わりの提案を出すわ。放課後付き合ってくれない?今日は悠斗が遅いから時間を潰したいの」




「時間つぶしに僕を使うのも君ぐらいだよ全く。いいよ了解、またメールする」




「ふふふありがとう待ってるわ」






互いにすれ違い前に足を止め、軽口のやり取りを交わした二人に周りが大きく沸き立つ。なんて言ったって美形トップツーが並んで楽し気に、笑顔を浮かべて話しているのだ。




周りは何てラッキー!そして二人とも何てお似合いなの!とそれぞれ盛り上がっている。




ひらりと男____アイが手を振ったのを見て、美優はアイを振り返ることなくまた止めていた足を進めた。




こうして今日もまた二人が付き合っていると言う噂と、美優が悠斗を愛していると言う噂が広まるのである。




……ふふ、とまたいい流れを作ってくれそうな野次馬をみて美優は一人笑みをこぼしていた。