ケータイ小説 野いちご

甘美なキョウダイ






「あら、もう行っちゃうの?」



「今日はまだ会社に用があるから。後、こっちに住むことにしても俺の住んでるマンションを引き払うのは辞めようかと思う。ここは仕事場から距離があるし、美優の学校からも遠いしあっちの方が色々便利なこともあるからさ」




「待って、聞いてないわ」



「大丈夫、西條(さいじょう)さんには俺から話すよ」



「でも…」



ご飯を食べた後、食後の紅茶を飲んでいる時悠斗さんが立ち上がって荷物をまとめ始めた。ちなみに西條さんとは私の父のことだろう。



会話を交わした悠斗さんと優香さんだが、優香さんに有無を言わさない笑みを悠斗さんは向けた。



美優さんはそんな悠斗さんを見つめている。まだ慣れないこの場に一人残されるのが不安だと言うかのようにその瞳は潤んでいた。




「……美優もおいで。こっちに持ってくる荷物の整理しなきゃね」



そんな美優さんに悠斗さんは優しく笑いかけ、そのまま私に視線を向ける。視線を向けられた私はドキッと色んな意味で心臓を高鳴らせ、悠斗さんの瞳に吸い込まれるように見入った。




「じゃあ今日はありがとう、志保ちゃん。まだ暫くはここに住めないけど顔は出来るだけ出すから。また今度は西條さんも交えてゆっくり話そう」



「は、はいっ」




悠斗さんの言葉に辛うじて返事を返し、去って行く二人の背中を見て夢心地な気分で暫くそのまま立ち尽くしていた。














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