右へ左へ目を泳がせる永井さんは、しばらく黙り込んだ後、コクンと静かに頷いた。
「す、き……っ」
チラッと俺の方を見ながら、勇気を振り絞って紡いだたった二文字の言葉。
予想以上に、照れくさい。だけど、その感情すらも幸せへと繋がっていく。
「進藤くんは、あたしのことどう想ってる……?」
俺の気持ちなんてこれっぽっちも気づいていない永井さんは、不安げにそう尋ねてきた。
ちょっとホッとした。
永井さんの可愛さに一番先に気づいたのが、俺でよかった。
もしも今ここで、君に好きだと伝えたらどんな表情をするんだろう。
「どう想ってると思いますか?」
その“答え”を知っても、明日また君は校則違反をして登校してくるのだろうか。
好きな人の視線を独り占めするために。
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