「伊都ちゃん、またね」
その言葉には反応せずに空き教室から出る。
制服の袖で唇をゴシゴシと擦る。
最悪最悪最悪!!
心の中で呟きながら、早歩きで校舎を出る。
初会話でしかも高校入ってまだ一週間なのに、ファーストキスをあんな簡単に奪うなんて……!
怒っていたけど、連想ゲームのようにさっきまで頭から消えていた京ちゃんと先輩のキスを思い出してしまった。
京ちゃんはいつもあんな恥ずかしいことをしてるんだ。
そう思うとやっぱり胸が苦しくなった。
京ちゃんは早速新しい女の子と遊んでるし、入谷くんには絡まれるし。
平穏な高校生活が送れますように。
ただただそう願うだけだった。