「だから、あたしが渚くんを幸せにできるまで、傍に……」

「ほのかちゃん、俺はもう幸せなんだ」


渚くんは、頬を包むあたしの手に、自分の手を重ねる。

手が、途端に温かくなった。


「ほのかちゃんが傍にいてくれたら、俺はどこにいても、いつだって幸せだよ。これからは、2人で幸せになろう、ずっと一緒にいよう?」


「渚く………っ」


つい、こぼしてしまった涙に、渚くんがそっと指で拭ってくれる。


「ほのかちゃんの涙に触れるのも、辛いときにこうして抱き締めるのも、俺だけにさせて……」


「渚くん以外なんて、考えられない……」


あたしは、鍵の無い檻の中にいた。


その檻は、もう粉々に砕けて、足元に、まるで星屑のようにキラキラと散らばっている。


もう外へは出られる、そして、あなたが手を引いてくれた。

もう、この檻の外を、恐ろしいとは思わない。

この道の先には、渚くんと一緒に歩む未来があるから。


「好き、渚くん……」

「俺も…ほのかちゃんが世界で1番大好きだよ」


あなたと目が合う度。

あなたが名前を呼ぶ度。

あなたが、あたしに触れる度に気づく。


あたしは、世界で1番、幸せなんだって…。

苦しくて、暗くて地獄のような日々。

どこへ向かって歩いているのかも、分からずに生きてきた。

もうきっと、見失わない。

あたしは、この人と……渚くんと、一緒に生きていくのだから。



2016.4.7◇END◇