「うぅん!ついたぁー!」


思いっきり伸びをして、車を止める響也さん。


家から片道二時間半。車の運転、

さぞ、お疲れでしょう。



窓の外のおばあちゃん家を見て思う。


まさか、こんなボロい家にくるとはね。


恵美社長、すなわち金持ちの祖母の家なら豪華だろうと勝手に想像してた。


完璧、田舎やなー。



「いらっしゃい。よく来たね」



笑顔のおばあちゃんが出迎えてくれる。



「おばあちゃん!出てきて大丈夫なの?」



響也さんが慌てたように言った。



「おばあちゃん扱いするんじゃないよ!百年早いわ!」



「はは!その調子なら平気だね」



シワが多いおばあちゃん。
だけどそれはずっと笑って生きてきた証拠。


私はこっそりと『素敵だな』と思ったのだった。


「ところであんたがさゆりちゃんかね?」


ーービクリ


肩を震わす私。


少し怖い。


どんな態度を取られるか。


私、再婚した子の相手の娘だし、この人と血の繋がりも何もない。




「はい、はじめまして…」



チラッとおばあちゃんを見ると、ニカァーと歯を見せて笑った。



「よく来たねーいらっしゃい!女の子の孫が出来て嬉しいよ!」



あれ…歓迎されてる?



「うへー。よく見たらべっぴんさん、のー」


う、うへー?べっぴん?のー?


よくわからない…。


おばあちゃんは近付いてきて私の頭をワシャワシャと撫でた。


「よしよし!」


爆発する私の頭。



桜井家の人の強引なところはおばあちゃんの遺伝だな…。


はぁ、とため息を付きながら、髪をいつものボブヘアーに戻した。


「入りな」


家の中はなんだか懐かしい香りがする。


昭和の時代を思い出すなぁ……(生まれてないケド…)



「うわぁー、おばあちゃんの家はやっぱり昭和の匂いがすんなー」



桜井くんも、ニカァーと笑っていった。



「あんたらも、平成の匂いがするよ。このゆとり世代め!」



「ゆとりってなぁにー?」



「ーーゆとり教育を受けた時代のこと」



「ゆとり教育はー?」



「ーー日本において1980年以降に2010年初期まで、実施されたゆとりある学校を目指した教育のこと」



さすが薫くん。昇くんの質問2連チャンに慌てることもなく、スラスラと答えた。



「つまり、響也にぃも僕も昇も、ゆとり世代だよ」



「えー!そうなんだー」




納得したように昇くんは可愛く笑った。




ーーーなんか、家の中騒がしいな…。



前までなかったこの空間。優しくて暖かくて、居心地がとても良かった。



なんでだろ。



なんだか胸の辺りが暖かい。


この感じ、前にも感じたことがある。


なんだっけ。この感じ……ーーー。