「トワがかっこいい、いじらしくて可愛い」

「やっぱり智弥子も、トワを男の子だと思ったんだ」



指摘すると、えっと大きな目が見開かれた。



「そう書かれてなかった?」

「どこにも書いてないよ。でも私もそういう気がしてる」



そしてそれはたぶん、管理人自身を男の子だと感じているのに由来している。

なんとなく、トワは管理人の分身のような、自分を投影した存在なんじゃないかと思えるから。



「男ってだけじゃなくて“男の子”か、言われてみれば確かに」

「まあ、わかんないけどね」



性別がどちらかわからない場合は“he”だと習ったせいで、つい“彼”と心で呼ぶうち、自然と男性だと思いこんだだけかも。

それにトワの生まれたてのイメージが重なって“男の子”になったってだけかもしれない。

よほどじっくり読んだのか、徹夜しかけてもなお智弥子はノベルスを読破していないらしく、今夜の楽しみができたわーといそいそと自分の席へ戻っていった。





「やあ、待たせたな」

「待ってませんし、待ち合わせた覚えすらないです」



人見さん、ととりあえず呼ぶことにした死神は、今日は正しく靴を履いていた。

私の視線に気づいたらしく、裏門の外に立っていた彼が、ハイカットのスニーカーの脚を掲げて満足げに微笑む。



「昨日、教えてくれたから」

「こっちのルールに慣れてるのか慣れてないのか、はっきりしてほしいです」

「忙しくて、時々混乱するだけだ」

「忙しいったって、基本はこっちにいるんでしょう?」

「俺たちが自席でのデスクワークを免れてるなんて、誰が決めた」



そんなこと言ってないし、自席ってどこよ。

心外そうに声を荒げられ、こっちこそ心外だと思っていたら、周囲の生徒たちからの視線に気がついた。

思わずセーラー服の脇のファスナーを確認してから、はっと思い当たる。