ある日ふらりと、お供も連れずに現れた大魔術使い様の扱いに、辺鄙な土地を治める領主は頭を悩ませておりました。


山ばかりとはいえ、国の中でもそれなりの広さを治めてはいますが、これといった特産品も何もなく、王宮に領主が集まる度に肩身の狭い思いをしているような、一言で言えばぱっとしない彼には、こんな賓客の応対など初めての事だったのです。


ああ、こんな事ならばもう少し王宮で洗練された話題でも仕入れておけばよかった。


魔術使い様をもてなすために毎晩豪華な夕食を用意し、共に席につきましたが、いつも会話はなく、カチャカチャという食器の触れ合う音ばかりで、彼は遠くの煌びやかなお城を思い出しては溜め息をそっとつくのでした。


それに魔術使い様はとても気難しく、たまに話をしたかと思えばすぐに黙り込んでしまう。

ああ、早いところ引き上げてもらえないかなあ、と思っていた、その矢先でした。