「またって何よ」

「だってお前等、この前も喧嘩してたろ」



佐伯の指摘は正しく、何も言い返せない。

今月に入って喧嘩が増えた。

理由はわかってる。



「……隆太郎は何も悪くない。私が全部悪いのよ」

「……」

「2月に入って、一緒に過ごせる時間があと少ししかないって事実に気付いて、不安になった。怖くなって寂しくて、我儘ばっかり言っちゃった」



思い出せば溢れてくる涙。



「向こうで住むアパート決まったとか……専門が一緒の子との話を笑顔でするの。その度に私の知らない隆太郎になっていく気がして」

「……うん」

「喧嘩なんてしてる場合じゃないこと知ってるのに、なんでこんなに巧くいかないんだろう……」



何をしたって確実に、隆太郎は行ってしまうのに。

こんな自分じゃ、駄目なのに。



「わざわざ呼び出してこんな話、ごめんね。どうしても誰かに直接聞いてほしくて」

「いや。俺、なんかした方がいい?」

「ううん、聞いてくれるだけで十分」

「……そっか」