「いるらしいぜ? オレは見たことねえけど。信子ババが言ってた」


「なんて?」


「恐ろしい化け物が住んでいるから、くれぐれも注意しろって。襲われたら命は無いと思え、ってさ」


あたしとお岩さんは無言で顔を見合わせた。


話を聞けば聞くほど、不安の芽がスクスク順調に伸びていく。


ものすごく、ものすごーく嫌な予感がするんですが。


「船の術師を総動員して、ムニャムニャ呪文を唱えてずっと結界張ってたぜ?」


「ねぇ、それ・・・今やんなくていいの?」


「やるにも、やれねえだろ? 術師なんかどこにいんだよ?」


いや、あのさ。


あたしが言いたいのは基本的に、そーゆー問題じゃなくて。


襲われたらひとたまりもないような、すんごい化け物がここにいるんだよね?


あんたはそれを、事前に知ってたんだよね?


なら、ちゃんと準備してるんでしょ?


何の対策も無しに、警戒レベルMAXの外国に飛んじゃうウッカリ旅行者みたいなマネ、してないよね?


・・・お願いだから、この不安の芽を摘み取って。


頼むから、大きく開花させないでちょうだい。