「ねぇ、しま子ぉ・・・」

「うあ?」


あたしはしま子に、不思議に思った事を聞いてみた。


あの時、あたしが散歩に連れ出された時。


どうしてしま子は、浄火への攻撃を止めてしまったんだろう。


別に攻撃して欲しかったわけじゃないんだけど、ちょっと気になる。


しま子はいつもあたしの敵に対しては、容赦なく向かっていくのに。



「天内のお嬢様、よろしいでしょうか」


しま子の返事を聞く前に、障子の向こうに人影が映り、低く心地良い声が聞こえた。


セバスチャンさんだ。



「はい。どうぞ」

「失礼いたします」


スッと音もなく障子が開き、正座したセバスチャンさんがその場で深々と頭を下げた。


そしてあたしに丁寧に謝罪する。



「天内のお嬢様、大変申し訳ございませんでした」


「へ? な、なにがですか?」


「ご散策の最中、なにか不手際などはございませんでしたか?」



あ、あぁ・・・そうか。


あたしと浄火をふたりきりにしてしまった事を謝ってるのか。


でも別に謝られるような、心配されるような事なんて、なにもなかったよ。


・・・・・・と・・・・・・思う。



不意にあたしは、浄火とずっと手を繋いでいた事を思い出した。


途端に、なんだか後ろめたい気がしてしまう。


け、けど、別にあれは、なんでもないもん!


そんな、気にするようなことじゃなかったし!



あたしは後ろめたい気持ちを横へ押しやるように、はっきり答えた。


「大丈夫です。心配ないです」