「ソージ!!」


青ざめたダリアが、口元に両手を当てて悲鳴を上げる。


「どうしよ、どうしよ…
あ!裏に井戸があったわ!
すぐに水を」


「もう… いいンです…」


ゾンビ的外見で吐血中とは思えないほど穏やかな声音で、ソージは走り出そうとするダリアを呼び止めた。

ナニをしても、もう無駄だ。

だからなんにもいらないよ。

もう貴方しかいらないよ。

どうか…

どうか…


「傍に、いて…」


掌に乗った淡雪のような儚い呟きに全てを察したダリアは、一瞬目を伏せ、静かにソージに歩み寄った。

床板の軋みすら出さぬよう細心の注意を払ってソージの隣に膝を着き、力ない手を掬い上げてそっと握りしめる。


「傍に、いるわ。」


その優しい囁きは、まるで子守唄のよう。

でも、待って。
まだ眠りたくない。


「ダリア…」


ソージは重くなる瞼を懸命に上げて、ぺールブルーの瞳を覗き込んだ。