「あの人は確かに、素晴らしい人や。


温厚で、いっつも笑ろうとるし、優しゅうて、頼りなる」






………それはたっちゃんも同んなしやん、と思ったけど。




なんだか恥ずかしいので、あたしは何も言わずに黙って聞いていた。







「ミサキがヤマモトさんならて思うたんは、納得できるわ」






「…………ん」






「でもなぁ………なんや、釈然とせぇへんねんなぁ………」







たっちゃんが何か言ったけど。



ちょうどそのとき、近くの線路を特急電車が通った。




耳を塞ぎたくなるほどの大音量で、たっちゃんの声が全く聞こえない。






「え? なんやて? たっちゃん。

いま、電車で聞こえんかったわ」





「あーぁ、盲点やったわ………」





「は? なんやねん、盲点て」





「気にせんといて……」





「………?」






あたしは首を捻りながら、みんなが待つ店へと足を早めた。