……佐伯センパイ、亜希のことはこれからずっとあなたに任せます。


 恋人っていう俺がずっとほしかったポジション、あなたにあげます。


 その代わり、“良い幼なじみ”のポジションは、これからもずっと俺だけのものにさせてください。


 ケータイを開いて、メール作成画面を開く。


 シンプルな文面。


 それに、画像を添付。


 宛先は、佐伯センパイ。


 ……さて、このメールを見た佐伯センパイはどんな反応をするだろう。


『俺から佐伯センパイにプレゼント!』


 たった1行の本文に、添付したのはさっき撮った写真。


 佐伯センパイとつながったケータイを耳に当て、嬉しそうに目を細めて笑う亜希の顔。


 メールがちゃんと送信されていることを確認して、自分の画像フォルダに入っていた亜希の写真を、消去した。


 もったいないなとも思ったけど、未練はなかった。


 ……何度も言いますが、俺の初恋は、想いを告げることなく終わりを迎えました。


 だけど、やっぱりこのポジションもおいしいんじゃないかなと思う。


 幼なじみの俺しか見ることのできない顔が、きっとあるはず。


 ニヤけた俺、ケータイメールの受信音。


 直後に着信を知らせた亜希のケータイ。


 そのどちらも、きっと相手は佐伯センパイ。


 センパイの忙しないその行動に、なんだかおかしくなって、笑った。


 そんな穏やかな、恋の終わりの日。


                       【end】