部室に近づくと、ベースとドラムの音に混じって、ギターの高音も聞こえてきた。




どうやら、三回生の先輩らのバンドが練習しているらしい。





部室の前には、五人くらいがたむろして、煙草をふかしていた。






「おぅ、ミサキ、おはよーさん」




「キジマさん、おはようございます」






真っ昼間に『おはよう』てどないやねん、とは思うけど。



バンドマンたちの夜は長く、そして朝は遅いのだ。






「ミサキさん、おはよーございます」




「んー、おはよー」





今年入ってきた一回生の男の子たちも、少し肩身が狭そうな感じで、隅っこに集まっている。




その近くに座っていた男が、あたしに気づいて手を挙げた。






「ミサキー、久しぶりやん」





「久しぶりなんは、あんたがサボってばっかりやからや」





「あはー、相変わらず手厳しなぁ」






これは、同級のワタナベ。



ちなみに、たっちゃんのバンド仲間で、ベーシスト。






「なーミサキ、たっちゃん元気しとる?」





「なんであたしに訊くねん、あんたのバンドメンバーやろ」





「いやー、俺らより確実にミサキのほうがあいつに会っとるやんか」





「んなことあらへん、週に二回会うかどうかやで」





「じゅうぶん多いっちゅうねん」





「やかましわ」







あたしは、投げ出されて邪魔になっているワタナベの足を軽く蹴りつけて、部室のドアを開けた。