身体にまとわりつくべたべたとした空気をかきわけるようにして。

 どうしてだろう、うまく息をすることができない。無意識のうちに胸をおさえるようにしながら、私は足を進める。

「きゃあっ!」

 背中に冷たい雫が滴り落ちてきて、思わず悲鳴を上げた。その悲鳴も暗闇の中にどこまでも響いて――

「……し……ほ……」

 私の名前を呼ぶ声は、どこから響いてくるんだろう。わけのわからない焦りに襲われながら、必死に前へ前へ歩いていく――自分が本当に前進しているのかわからないままに。

「比奈子っ! どうしてっ……!」

 どうして……して……て……。

 いつの間にか、周囲の景色は大きく変わっていた。

 目の前に比奈子が立っている――けれど、その身体は自由にはならないみたいだった。比奈子の身体は、下半身が石のようなものに覆われている。

 そんな状態で逃げられるはずもないのに、檻のような場所に閉じ込められていた。