あーあ。

言っちゃった。
ヤっちゃった。


「イイの?
やったー。」


なんて、彼女はまた笑う。

嬉しそうに。
子供のように。

ごめんね?

そんな無邪気な笑顔を向けてもらえる資格はないンだよ。

俺はズルい男だ。

もう会っちゃいけないのに、また会える可能性を残しておきたかったダケ。

彼女の身の安全を蔑ろにして、自分の欲望を押し通したダケ。

俺はヒドい男だ。

本当にごめんね?

昼間のバーサンと同じように、嘘に塗れたソージを残して女は去っていく。

昼間の黒猫と同じように、身軽に塀に飛び乗って、そして駆けて。

ヒョイヒョイと塀から塀へ、その上、屋根にまで飛び移って。

あぁ…

行ってしまう…

やっぱりソージは、最後まで女から目を離すことができなかった。

その姿が小さくなって闇に溶ける寸前、彼女がチラリと振り返ったような気がした。