「動くな、盗人。」


上段に構えようとして…やっぱりやめて、切っ先を下にした刀を腰に当てて姿勢を低くする、抜刀の構えを取ったソージが地を這うような低い声で言った。



一応、頑張って迫力出してみたケド…

大丈夫カナ。
バレてないカナ。

長い時間、刀を上段で支えていられないほど腕力が衰えていることに気づいて、方向転換したコト。

バレてたら、アレだな。
即バトルスタートだな。

ヤれンのか?俺。

全く…
情けない身体になっちまったモンだ。

だがソージの憂慮に反し、黒い人影は井戸に釣瓶を落として両手を上げた。

そして、ゆっくりと振り返って…


「怪しい者じゃナイござる。
ちょっと水を貰いに来たダケござる。」


片言でナンカ喋った!?

いやいや…
怪しすぎだから。

『ござる』の使用方法、微妙にオカシィし。

黒装束だし。

頭に唐草模様の風呂敷被った挙げ句、鼻の下で結んでるし。

もう怪しさしかねェから。

思いの外華奢だし、可愛らしい声だケド…