これも、ただの偶然なんかじゃない。


 さかのぼると、俺が3年前に宮下さんに出会ったことだってそうだ。


 俺が“偶然”持っていたリコリスも。


「……先輩。偶然って何回重なれば、必然になると思いますか?」


 どこからそんなに湧き出てくるのか不思議なほど、彼女はよく泣く。


 だけど、今は俺も泣きたい気分だ。


「そうだなあ、“あの花”だけが知ってるんじゃない?」


 俺はまた、ひねくれた返事を彼女に返す。


 だけど、そんな俺の言葉に彼女は微笑んで、ただただ泣いた。


 ちゃんと言葉にしないこんな俺を、今だけは許してほしい。


 だって、俺だって、泣きたいのだから。


「道しるべだったんですね、きっと。“あの花”は。私と佐伯先輩がまた出会うように……」


 俺は運命を信じるよ。


 リコリスが咲いたのは、6月と言った宮下さん。


 俺らが出会うきっかけになったのも、その月で。


「全部、繋がっていたんですね。私たちがまた……」


 最後まで言い切ることなく、俺の背中に腕を回した彼女の細い身体をきつく抱きしめた。


 ああ、やっぱり彼女には敵わない。


 言いたいことは、わかってる。


 だから俺も、何も言わない。


 リコリスの花言葉。


 ―――それは、“再会”。


                       【end】