神坂弘樹。

こいつはその容姿からか病院内では、有名人だった。

けど、理由はそれだけじゃなかった。

『弘樹くんね、この病院の院長の息子さんなんだってー。』

と、さやかが言ってた。

あの容姿だけじゃなく、家柄もヤバイとか、どんだけだよ。

っと少しムカついた。

あんな裕福な奴、尚更私のことなんて理解できないだろ。

体だって健康そうだし。

ホント、早く終わってくんないかな…。

ーーー…。

午後4時半。

今日もまた、ウザいカウンセリングの始まり。

ここ数日、神坂も実習だし、結構真剣にやってはいる。

ただ、私のことを話さなきゃいけないのが、嫌だ。

まぁ、そういうことをするんだから、仕方ないんだけど…。

「んで?病気のきっかけは?」

ほら、来た。

一通り経歴を喋ったら、次はこれ。

私の病気について。

これは私が一番話したくないこと。

自分でも表情が曇っているのがわかる。

「…話したくないか?」

「…。」

確かに、こいつは中々話のわかるやつだ。

私の嫌がることは、あまり深く追求して来ない。

けど、これはさすがに聞いておきたいのだろう。

話をそらす気は無いらしく、黙って私を見ている。

まぁ…仕事だもんなこいつも…。

「…私が中学1年のとき。」

ゆっくり、言葉を絞り出すように、私は重苦しい、思い出したくもない過去を話し始めたー…。