「え、課長…?」

祥子は、俊樹の目を見て首を傾げた。

いつもは鬼みたいに社員を怒鳴り散らしている、俊樹。

もちろん祥子も何度も怒鳴られていて、そんな上司が自分の為に飲み物を買ってきてくれるなんて、夢にも思わなかったのだ。

「どうした。俺がこんなことしたら、気持ち悪いか」
「い、いえっ。そんなこと思ってませんっ」

俊樹は短いサラサラとした髪を片手で掻き上げると、祥子を見て苦笑した。

そんな俊樹を初めて見た祥子は、内心ドキリとしながらも慌てて顔を横に振った。

「んな、怯えた目すんな。取って喰ったりしねぇよ」

今度は喉の奥で、ククッと笑った。

「もう、終わりそうか?」

祥子が俊樹の発言に困っていると、違う言葉が落ちてきた。

「あっ、はい。あと少しで帰れそうですっ」

祥子は俊樹を見つめると、軽く微笑んだ。