「姉弟に見えないというか、あまりにもお似合いすぎて考えられなくて……。そういえば、茜さんはご結婚されていて、息子さんもいらっしゃるんですよね」
「そうよ。自慢の旦那と息子」

眩しい太陽のようにニコッと笑う茜さんは、とても幸せそうに見える。そんな風に紹介できる家族がいるなんて、すごく羨ましい。

「素敵です。私は結婚できるかな」

つい、いつも感じている不安が、口からポロリと零れ出る。

「結婚なんて、誰でもできるわよ。幸せな結婚をしたいって、強く願うから難しいだけ。結婚したいだけなら、弟をもらってやってよ」
「なっ、え……い、樹さんを!?」

樹さんと結婚できたら、それは幸せな結婚になるんだけど……。

「こら、茜。勝手なことを言うなよ。俺はまだ千穂ちゃんにフラれたくないんだから」

カウンターから私達の話を聞いていた樹さんは、頬を膨らませる。それから芳ばしい香りがするコーヒーを差し出した。

私が樹さんをフルなんて……そんなことあるわけないのに。

お世辞でもちょっとだけ照れてしまう。

落ち着こうと、淹れてくれたコーヒーを飲むと、優しい味が身体中に沁みわたってホッとする。そうして息をついていると『サプリ』の扉が勢いよく開いた。

「樹さんっ……!」

樹さんの名前を呼びながら現れたのは、小動物のように可愛らしい女性だった――。