少し離れた場所で、営業主任と話している龍之介を見てみれば。


「爽やかな笑顔振りまいちゃって」


龍之介のホントの姿は、腹黒、意地悪、自分勝手。その上絶倫!!


でもそんな素振りは微塵も見せずに、会話を楽しんでいる彼は……。


憎たらしいほど、カッコいい───


心の仲で呟いたのに、偶然なのか龍之介が振り向いて、思わず苦笑い。


昨晩龍之介に“好きだ”と言われて、身も心もひとつになることができて。


幸せマックス状態!!


きっと今の私は、締りのない顔をしてるよね。それを抑えようとしても、勝手に緩む顔はどうしようもなくて。


「菜都さん」


そう呼ばれて振り返ると、大きな荷物を抱えて立っていた拓海くんに笑われてしまった。


「拓海くん、笑いすぎ」

「朝から何か、いいことでもあった?」

「そ、それは……」


言えない。私のことを“好き”と言ってくれた拓海くんに言えるはずがない。


龍之介はこの旅行中に“決着をつける”と言っていたけれど、好きと言われたことへの返事は自分でしないといけないよね。


でも今は、そのタイミングじゃない。


「菜都さん?」


私の名を呼び顔を覗き込む拓海くん。その目は心配そうに揺れていて……。


「コンビニのメロンパンが、いつになく美味しくてさ」


嘘をついてしまった。