握られた手が熱い。それが何を意味しているのか……。


手元から目線を上げると、拓海くんの私を見つめる瞳から嫌というほど気持ちが伝わってしまう。


「た、拓海くん、この手……」

「少しだけこのままでいさせて。これ以上は、何もしないから」


悲しそうにそう言われて、何も言えなくなってしまった私。


こんな時にそんな顔、ズルい……。嫌だって言えないじゃない。


もう一度、繋がれた手元に目線を落とし暫くの間黙っていると、拓海くんが大きく息を吐いた。


「菜都さんっ!!」

「は、はいっ」


突然大きな声で名前を呼ばれてしまい、びっくりして返事をしてしまった。


恥ずかしい……。


「やっぱり菜都さん、可愛い」

「可愛いって。私、年上だよ?」

「年上って、たったひとつじゃん」


そりゃそうだけど……。


「ホントはさ、堤所長のあんな態度見て勢いで菜都さんに告白しちゃって、でもよくよく考えたら堤所長が相手じゃ勝ち目なさそうだし、菜都さんも堤所長のことが好きなのわかっちゃったからもう諦めようと思ったんだけど……」


そう言って目を瞑る拓海くん。その顔が少し苦しそうで、私まで苦しくなってきた。


次の言葉を、固唾を呑んで待つ私。


「ここで諦めたら男じゃないよね。俺、菜都さんには、ずっと俺の隣で笑っててほしいんだ。まだ俺にもチャンスはある?」

「それは……」

「やっぱ答えなくてもいい。俺これからは、遠慮せずにガンガン行くからさ。菜都さん、覚悟しといてね」


満足気にそう言うと、繋いでる手に力が込められた。