帰る? どこに? あぁ、私を家まで送ってくれるのね。だったら道案内しないと。


でもジッと前を見据えたまま、怒ったような顔をしている堤所長に話しかけるのは、結構勇気がいるというかなんというか……。


でも堤所長が私の家を知っているとは思えないし。


「あ、あのぉ、堤所長?」


「なんだよっ?」


たった一言なのに、なんという威圧感!! あんたは裏の世界の人かっつーのっ!! ムチャクチャ怖いんだけど……。こんなんじゃ、聞きたいことも聞けないじゃないっ。


どうする? どうするの、菜都っ!!


ひとり頭の中で、あーでもないこーでもないと考えていたら、堤所長の冷ややかな声がした。


「キモい」


もうさっきからヒドい言われようじゃない? 私が何をしたっていうのよっ!!
そりゃね、面倒くさい女拾っちゃったかもしれないけど、車を停めたのも中に連れ込んだのも、堤所長っ、あなたでしょっ!!


それを“バカ女”だの“キモい”だの、言いたい放題。一応こんな私でも、プライドってもんがあるんだからっ!!


目つきをキッと強いものに変え堤所長を睨みつけると、所長も何か感じとったのか、車をコンビニの駐車場に停めこっちを振り向いた。