「なんか僕は、彼を怒らせてしまったみたいですね」


自分の頭をとんとんっと叩いて申し訳なさそうな顔をする堤所長に、慌てて頭を下げた。


「すみませんっ。西野くん、いつもはあんなんじゃないんですけど……」


「いやいや、菜都さんが謝ることないでしょ? でも西野くんのあの態度……」


顎に手を当てると何かを考えだし、ふっと笑みを漏らした。


「なにか?」


少しだけ堤所長に顔を近づけると、笑みを濃くした所長が私の耳元に顔を寄せた。


「彼はライバルみたいです。鈍感な菜都さん」


そう言って私の頭をポンポンと触れると、元いた上座に戻っていってしまった。


彼はライバル? って拓海くんのこと? なんで部下がライバル?
まだ触れられた感覚が残っている頭を触り、離れていく堤所長の背中を見つめる。


それに“鈍感な菜都さん”って、どういう意味だろう?


どんかん、ドンカン、鈍感……。
ああぁぁぁ~っ!! 分かんないっ!!


突然訪れた恋は、ドラマみたいに簡単には進まないみたいですっ!!