「朝からうれしそうですね? 菜都さん?」


朝礼中だからと小声で話しかける彼、西野拓海(にしの たくみ)。歳は私の一つ下で25歳。営業担当として、毎日あっちこっちと走り回っている。


今目の前であいさつをしている堤新所長とは、全く違うタイプ。身長は170センチとさほど高くなく、身体つきも細め。可愛いアイドルみたいな顔ををしていて、笑うと少し垂れる目は愛嬌たっぷり。私にとって、弟みたいな存在だ。


今もそうだけど、拓海くんは甘えん坊なのか身体を寄せることが多いし、スキンシップをすぐ取りたがる。


営業所内では当たり前の光景で、特に何も言われることはないし、懐かれるのも嫌ではないけれど、これからはちょっと控えてもらわないといけないかな。


「拓海くん、もうちょっと離れて」


「えぇ~、なんでですか? いつもはそんなこと言わないですよね?」


クイッと身を屈め私の顔を覗きこむと、ニコッと吸い込まれそうな笑顔を見せた。いつもの私ならその顔に負けてしまい、何でもOKを出してしまうんだけど、今日はそういう訳にはいかない。


チラッと前の方に目を向けると、こっちを向いていた堤所長と目が合ってしまい、身体がビクッと小さく跳ねた。