「はあ……っ」 しばらく走って、後ろを振り返っても、辻村くんが追いかけてくる様子は無い。 「……なにが、あいつとはもう何でもない、よ」 なに、その少女漫画みたいな。 恋愛ドラマみたいな。 ……恋人に対する言い訳みたいな、セリフ。 「……私たち、そんなんじゃないでしょ…」 もやもやと心を覆う靄(もや)は、どんどん質量を増して。 重たいその靄に、もうすぐ私は押しつぶされてしまうんじゃないかと思った。