そこに立っていたのは、傷だらけの根岸先輩。


左腕はギブスをはめていて、顔にはあざができていた。


「お前、どうしたんだその傷」


すかさず浅野先輩が真剣な口ぶりで尋ねた。


「なんでもねぇよ」


「大丈夫?」


あまりの痛々しさに、みさと先輩は顔を歪ませている。


「なんでもねぇから」


ぶっきらぼうに答えると、さっさと絵を描く準備を始めた。


まるで、他のことから逃げ出すために、早く無心になりたい、といったふうに。


だけど、左腕のギブスのせいで素早く準備できない。