「…はあ~…。」



溜め息ついて…



私は机に伏せていた。



湿気でムシムシするから気分が悪いのと……



それと…、


それを凌ぐ要因がひとつ。





『私…、彼を好きになっていいかな。』




結の……



一言。




アレが頭をこだまして……



何だかうるさいくらいだ。




でも…



よく考えようよ、私。



結が人を好きになるのに何故私の許可がいる?



大体、私があいつの近くにいるってどういう見解?





「…妄想注意。顔が呆けてる。」




「…………。」




中道が斜め前から



『にししっ』って笑う。




「…………。」



確かに席は近いけどさ。



けど……




「…おー…、無視か?」




今はアンタのこと考えてる余裕は1㎜もない。



なにさ、何も知らないくせに。



これのどこが苦労してる顔~?






……でも……



どうして結が知ってるの?



中道が…
話したのかな。






私は中道の顔をじーっと見つめた。



「………?お…」



ヤツが口を開き掛けたその時……



「ねえ、ちょっと、中道~。」



よそのクラスの女子生徒が…それを遮った。




「…なに?」




「中道って部活してないし暇でしょ?みんなで家遊び行っていい?」



「ひでー言われようだなあ。暇とは限らねーじゃん。つーか…、家?ダメダメ。ウチは女子禁制!」



「…え~?お母さん厳しいとか?」




…おいおいっ


空気読め!



「…そうなんだよね。彼女にヤキモチ妬くわうるさいわ、もー面倒くせーの。」



「アハハっ!じゃあ彼女連れ込めないじゃん。」


「大丈夫、そーゆーのは他で済ませるから。」




…エロ……?



「…やらし~!じゃあ今度家に来たら?」



「暇じゃない時にネ。」



「わかった~、でもケー番知らないんだけど。…教えて?」



「…あー……、今日忘れてきたわ。」



「なんだ~、残念。じゃあまた今度ね?」



「おう。分かった。」





プンプンと鼻をつく香水の匂いを振り撒いて……



そのコは去っていく。




「…アンタ今…、嘘ついたでしょ。」



……お母さん、いないんでしょう?



「……。…なんで?」