「生きていたのか」

フェイは鋭く睨みつける。

「私は納得がいかない…! 〝Ⅰ(ファースト)〟が死のうと、まだ〝Ⅱ(セカンド)〟が残っているのですから、早く新たに実験をしなければ!」

ぷちん、とアンネッテの中で何かが切れた。

「ふざけないで! 人の命をなんだと思っているのよ!」

怒声を発しながら、火傷の男までズカズカと近寄って行く。
アンネッテは男の胸倉を掴む。

「あんたたちのせいで、ディオンが死んだのよ! セリシアもディオンも、本当は家族と一緒に、幸せに過ごせるはずだったのに……なのにそれを、あんたたちが奪ったのよ!」

許せない、と叫んだ。
勢いよく、その男の頬をぶつ。
よろめきながら、火傷の男はその場に尻もちをつく。

「レクスなんて組織さえなければ、こんな悲しいことは起こらなかったのに!」

涙を流しながら、男の首を締めつける。
完全に、怒りで我を失ってしまっていた。

「アンネッテ、やめるんだ」

フェイが止めに入る。

「でもフェイ、許せないよ!」

「俺だって許せないさ!」

切れてしまうほど強く、フェイは唇を噛み締めていた。
アンネッテは悔しそうに手を離す。

「一五歳の子ども一人が死んだくらいで……」

「お前は黙っておけ」

ぐはっ、と火傷の男は倒れる。
フェイがみぞおちを殴ったのだ。
そんな二人の様子を、セリシアは呆然と眺めていた。