「せ……」

 先生、この人誰?

 と訊こうとして、紫音にまたぎろり、と睨まれた。

 そうでした。

『先生』とは呼んじゃいけなかったんだ。

 紫音は、わたしを降ろすと、ため息をついた。

「ホストクラブ、ダーク・クラウンのオーナーだ」

「あら、いやぁねぇ。
 本当のオーナーは、紫音ちゃんじゃない。
 あたし、このお店を手伝っている薫ちゃんよ。
 忙しい紫音ちゃんのか・わ・り・に・ね♪」

 オーナー!?

 先生、ホストクラブを経営しているの……?

 それに、この人……

 はじめて見たけど……これってオカマさん……?

 背が高く、筋肉質の身体に黒い……ドレス。

 喋る野太い声が、おねぇ言葉だ。

 薫ちゃんは、人差し指をふりふりっと振ってにっこり笑った。

 わたしに向かって。

「あなたは、なにちゃんって言うのかな?
 ごめんなさいね。
 せっかく紫音ちゃんと一緒にお店に来てもらったのに、今日は特別な日なの。
 紫音ちゃん、あまりあなたの近くにいけないかもしれないけれど……
 ウチには他にも、一杯イケメンな男の子がいるから、皆で楽しく遊びましょ?」

 薫ちやんの言葉に、紫音は首を振った。

「ああ、薫。
 こいつ、オレ『の』客じゃないから」

「……え?」

「どっちかって言うと、オレ『が』客。
 時間まで、オレの控え室で待たせておいてくれ。
 今日は一時間で上がるから」

「ええええっ!!!」