あの日と、ほとんど同じ会話。



睦月は「海がいいんです・・・・」と小さく答えた。



海は意外と近くて、15分程度で到着した。



時刻は午前9時。



ケータイを開くと、いくつかの着信が入っていた。



もちろん七海や莉奈、社員たちからだ。



そこに、輝からの着信、そしてメールもあった。



[睦月さん、今どこですか?9時半には旅館出て京都観光しますよ。連絡下さい]



輝からのメールなんて珍しく、何故か顔がほころんだ。



が、睦月は自分の顔が緩んでいることなんて気付かない。



用があるから後で合流する というような内容で返事を出し、目の前に広がる海へ足を踏み出した。



瞬間、買ったばかりの春コートのポケットから音が鳴った。



さっき入れたばかりなのに、と音の主であるケータイを取り出すと、何度目かの輝からの着信。



「もしもし?」



癖になってしまったのか、輝と話すときは少しうっとおしそうな声を出してしまう。