まず奪ったのは声。

 あの娘があなたに話しかけるたびに、ちくちくと刺すような視線と、あなたを呼ぶ甘い声。

 そのたびにあの娘はひどく傷ついた顔をしていたけど。

 耳元で、あたしのこいびとに馴れ馴れしいのよ、と囁く。あの娘はそれはいい子だから、泣きそうになってごめんなさいとつぶやいた。

 ああ、やっぱり馬鹿みたいに優しい娘!


 あの娘はだから、すがるようにあなたを見つめるだけで、そしてあたしはそっとそれを遮った。

 それで終わり、幸せなはずだったのに。


 あの娘もまた、恋をするために生きていたのね。