「達郎兄ちゃんは麗美姉ちゃんが心配だから戻ってきたんでしょ」

達郎兄ちゃんは答えなかった。

あたしはそれを肯定と受け取った。

「だから達郎兄ちゃんは麗美姉ちゃんのことを好きなんだって思ったんだけど」

逆もまた然り。

親兄弟親戚一同すべて、「あのふたりは相思相愛」と思っている。

はっきりしていないのは本人たちだけ。

これがあたしたち一族の共通の見解だった。

「言わなきゃわからないこともある」

達郎兄ちゃんはつぶやいた。

「言った方が相手は喜ぶこともわかってはいるんだがな」

ん…?

「達郎兄ちゃん、それって…」

麗美姉ちゃんへの告白のこと?

思わぬ展開にあたしが深く突っ込もうとした時、病室のドアが開いた。

「じゃ、また明日」

達郎兄ちゃんは颯爽と立ち上がる。

ああっ、逃げられた!

「お食事ですよー」

『やかましい!!』

あたしは食事係のおばさんに、そう怒鳴りつけたくなるのを必死にこらえた。