目の前のグラウンドでは、陸上部が練習をしていた。

陽人とヤマタロはペアを組んで柔軟体操をしている。

私はパイプ椅子に腰掛けて、2人の様子を観察した。

2人のストレッチは、気がつけばプロレスに変わっている。

(ほんとに仲いいよなぁ……)

見た目も性格も正反対なのに、ホント不思議。

でも、それを言うなら私とチョコだって違うよね……。

そんな、自分にはない相手の魅力にひかれるから、うまく付き合っていけるのかもしれない。

じゃれていた2人が私に気付いて手を振ってくる。
なんだか子供みたい……。

私も、周囲を見回して誰も見ていないのを確認したあとで、お愛想で小さく手を振り返した。


2人の楽しげな様子を眺めながら5分くらい練習した頃、私は隣に人の気配を感じた。

その人影は、手にしていた譜面台を無造作に地面に置き、パイプ椅子を広げた。

パイプ椅子の音が、小さくキィって鳴る。

「もう、始めてたの?」

パイプ椅子に座り、楽器ケースからピカピカのトランペットを出す1人の男。


彼の名は、秋山慎。

……そう。私の彼氏登場。



そして私は、なぜか緊張。