「ほんっとに怖いんだよ!もうね、思い出しただけでおいら寒気が…」

 松汰は怒れる真鯉の恐ろしさについて熱弁を振るう。

 身振り手振りまで入って全身で恐ろしさを表現している。

 まるで化け物か何かのような扱いである。…まあ、真鯉は正真正銘の精霊なのだが。

 そんな松汰に、いまだ半信半疑ながら相槌を打つりい。


 いつの間にやら、掃除も真鯉に謝ることも忘れ、軒先で賑やかに話しつづける二人。

 今日も天気が良い。

 段々と初夏に近づくこの頃は、風も爽やかだ。

 のどかな午後、のどかな昼下がりである。


 …の、はずだった。


 少なくとも、その瞬間までは。