翌日、家族皆で、駅まで
メトロポリスに向かう
ジェイドを見送る。

目的のオーディションを受けに
行くために旅立つ彼を
一人一人が抱きしめる。

それは、普通の旅立ちにも
見えるだろうけど、
彼にとっては特別なモノだと
思う。

自分の番が来て、
彼をハグした私を
抱きしめた腕を
ジェイドは、時間ギリギリまで
とくことはなかった。

中々腕を緩めない彼を
家族が苦笑して見ていたけれど

「今度、いつ帰ってくるの?
お兄ちゃん。」

エリスの問い掛けに
彼は嬉しそうに笑みを
浮かべる。

「皆が望むなら、直ぐに
戻ってくる。」

そう答え、
父を抱きしめ、
母を抱きしめ、
彼は涙を静かに零す。

両親も目頭を押さえていて。

「やだ、二人とも
また帰ってくるのよ?
ジェスは。」

エリスが、そんな二人を
なだめていて。


「そろそろ、時間だわ。
成功を祈ってるわ。
気をつけていってくるのよ。」

彼の背中を押せば
彼は頷き、潤んだ瞳を
こちらに向ける。


「ディオナも。
昨日言った事、考えておけよ。」


彼は、最後に
もう一度、私を抱きしめて
改札をくぐり抜けていった。