下校途中、あたしは道路の真ん中でよちよち歩きする、子猫を見つけた。

「かわいい!」

そう萌えると同時に目に入ったのは、猛スピードでやってくるトラック。

その直線上には子猫。

あたしの萌え心は一瞬にして吹き飛んだ。

あたしはカバンを放り出して道路に飛び出し、子猫のもとに駆け寄った。

両手で子猫を抱えた時には、トラックはもう目の前。

「あっ!」という顔をしたトラックの運転手が視界に入る。

あたしは無意識に目を閉じて、思い切り地面を蹴った。

地面を何度か転がったような気がした後、目を開けた。

あたしの頭の上にはガードレールがあった。

背中にはアスファルトの感触。

どうやら道路の反対側にたどり着いたらしい。

上体を起こすと、トラックが猛スピードで過ぎ去って行くのが見えた。

「旭さん大丈夫!?」

駆け寄ってきたのは一緒に歩いていた湯月くん。

あたしの彼氏だ。

湯月くんは律義にあたしのカバンを拾ってくれていた。