5月10日 金曜日。

ゴールデンウィークも終わり、社内も落ち着きを取り戻していた。

私と晴生は、社内では仲の良い同僚として過ごしている。


「木村係長、今日の分の帳票類です。
検印、お願いします。」

「はい。
いつもありがとう。
そういえば、野原さん、最近、雰囲気
変わったね。」

係長は、帳票を確認しながら言った。

「えっ?
そうですか?
何も変わってないと思いますが。」

「んー、
何だか、柔らかくなったというか、明るく
なったというか、笑顔が素敵になったと
いうか。
って、こんな事、言ったら、セクハラって
言われちゃうかな?」

係長は、ニコニコしながら私を見る。

「ふふっ
そんな事で、セクハラなんて言いませんよ〜。
もし、そう見えてるなら、嬉しいです。
ありがとうございます。」

私が明るくなったのなら、それはきっと、晴生のおかげだ。

「恋人ができたのかな?
でも、結婚退職はしないでよ。
野原さんがいなくなると、うちは立ち行かなく
なってしまうから。
共働きでお願いしますね。」