あの日月夜に魅せられた私は、テラスに頻繁に行くようになった。夜遅い時間だと誰もいないから、美しい夜空を眺めながらのんびり過ごすことができる。レミーも気に入ってくれたようで、テラスを楽しそうに走り回っている。


っ!?


椅子に座ってボーッとしていたら、突然肩にストールをかけられた。



「今晩は少し冷える」

「ありがとう」



一人でボーッとしていると、こうしてジーン王子が来ることがある。そして当然のごとく隣に座る。私が通うようになる前から、ジーン王子の方がここを訪れていたのかもしれない。


この美しい顔は見慣れたはずなのに、ドキドキする胸はどうにもならない。憎むべき相手なのにどうしてこんなにも愛してしまったんだろう。私はおかしいのかもしれない。そんな風な自問自答を何度繰り返したかわからない。


走り回って遊んでいたレミーは戻ってくるなり、ジーン王子の腕を伝い肩へと座った。満足そうな態度。



「私以外の人にこんなに懐くなんて本当珍しい。 何だか少し妬ける」



レミーはヘンリーとパパにも凄く懐いていた。



「基本動物は寄って来ないんだけどな。 変わった奴だ」



そう言いながらも、レミーを撫でる指先はとても優しく見えた。普段見る姿からは想像できないくらい柔らかな雰囲気。