* 風都 side **




正直、分からない。


叶わないのが分かってて、どうしてそこまで相手を想うのかが。




「り、りきのばか〜…っ」

「うんうん」


そんなにもボロボロになるまで泣くくせに、どうして好きでいるのかが。



それなのに、やっぱりバカだなと思いながらも俺は、今目の前で泣いてる彼女を抱き締めてあげたいと思ってしまっている。


俺が幸せにしてやりたいと、思ってしまっている。






最初はただ、この子と結婚をすることだけを考えてた。




急に父さんから「婚約者がいるから日本へ行け」だなんて言われた時は流石に驚いたけど。


それでも、将来は会社のために誰かと結婚すると分かっていた俺に異論はなかったし、寧ろ相手が彩葉ちゃんのような可愛い子でラッキーだとも思った。




…から、彼女に本性を言い当てられた時は本当に驚いた。



少しばかり過剰に言われすぎたけど、ほぼ正解。


親の仕事を手伝っていると表情を取り繕うことを無意識に覚えてしまう。


まぁそれが定着したおかげで世渡り上手になれたわけだけど、逆に言えば俺の本音を知ってくれる人は誰もいなかった。